ECサイトにおける購入頻度のパターンから行なう顧客分析

EC(eコマース)

ECサイトにおいて顧客分析は重要です。既存ユーザーをより深く理解することは売上向上にも影響します。今回は購入頻度の観点から顧客分析を行ない休眠顧客や優良顧客を見つけ出すための方法を説明します。

購入頻度のパターンから休眠傾向にあるユーザーを特定する

今回説明する方法は「3年以上前から会員登録をしているユーザー」の分析を想定しています。
まず顧客分析を行なうために重要な指標として「購入頻度」というものがあります。購入頻度は文字通り「特定の期間における繰り返し購入された回数を測るための指標」です。この指標を用いて購入パターンを分析し顧客分析を行ないましょう。

まず、なぜ「3年以上前から会員登録をしているユーザー」に限定するかというと、今回の方法で分析をするためには複数年の購入頻度の推移を見る必要があるからです。(商品のリプレースメントサイクルによっては例えば3ヶ月などの期間でくくるのもアリです)
例えば以下のような購入頻度のユーザーが3人いたとします。

■ユーザーA
2021年の購入回数 6回
2022年の購入回数 8回
2023年の購入回数 10回

■ユーザーB
2021年の購入回数 30回
2022年の購入回数 30回
2023年の購入回数 15回

■ユーザーC
2021年の購入回数 10回
2022年の購入回数 10回
2023年の購入回数 10回

さて、この中で一番良い購入パターンなのは誰でしょうか?
単純に一番購入をしているユーザーBでしょうか?もちろん単純な購入数のみで判断してもいい場合はそれのみで判断するのもありなのですが、ユーザーBの購入回数をよく見てみると「30回(3年前)→30回(2年前)→15回(1年前)」と3~2年前は同じ購入回数だったのに対し直近の1年前は約半分の15回となっています。
購入回数自体は他のユーザーと比べてまだ多いですが過去の購入回数からガクッと落ちているのは危険な兆候です。休眠ユーザー入り待ったなしの状態と呼んでも過言ではありませんので早急に適切なフォローが必要です。

では、この中で最も良い購入パターンは誰かというとユーザーAとなります。
購入回数自体はまだ少ないですが、年々購入回数が増えていっているため「優良顧客の購入パターン」といえます。つまり、購入回数だけを見るのではなく年ごとの購入回数の推移を見る必要があるということです。

様々な購入パターン

以下、様々な購入パターンを羅列してみましたので確認してみてください。

■優良顧客のパターン
ランク優良
2021年の購入回数 10回
2022年の購入回数 15回(上昇)
2023年の購入回数 20回(上昇)

ランクA
2021年の購入回数 15回
2022年の購入回数 15回(維持)
2023年の購入回数 20回(上昇)
特徴:最近ブランドに対し興味・関心が増したユーザー層です。
   経験上、関心が増した要因にお宝が眠っていることが多いです。

ランクB
2021年の購入回数 15回
2022年の購入回数 10回(減少)
2023年の購入回数 15回(上昇)
特徴:薄れていた興味が最近になって復活したユーザー層です。
   一度興味が薄れた理由やそれが復活した理由を調べる必要があります。

■安定顧客のパターン
ランクC
2021年の購入回数 10回
2022年の購入回数 15回(上昇)
2023年の購入回数 15回(維持)
特徴:興味を持ってからそれが維持されているユーザー層です。
   興味を持ったきっかけやそれが安定して維持されている理由を調べる必要があります。

ランクD
2021年の購入回数 15回
2022年の購入回数 15回(維持)
2023年の購入回数 15回(維持)
特徴:優良顧客にも休眠顧客にもなり得るユーザー層です。

ランクE
2021年の購入回数 15回
2022年の購入回数 10回(減少)
2023年の購入回数 10回(維持)
特徴:当初持っていた興味が薄れ始めているユーザー層です。
   興味が薄れ始めている要因を調べる必要があります。

■休眠顧客のパターン
ランクF
2021年の購入回数 10回
2022年の購入回数 15回(上昇)
2023年の購入回数 10回(減少)
特徴:一度は関心が増したもののまたすぐに興味が薄れてしまったユーザー層です。

ランクG
2021年の購入回数 15回
2022年の購入回数 15回(維持)
2023年の購入回数 10回(減少)
特徴:安定して活動していたものの最近になって興味が薄まったユーザー層です。
   危険な兆候なため、リカバリー策の検討やこうなってしまった要因を調べる必要があります。

ランク休眠
2021年の購入回数 20回
2022年の購入回数 15回(減少)
2023年の購入回数 10回(減少)

各パターンの特徴と対策

優良顧客のパターン

長い期間、高い関心を保ち続けているユーザーのグループです。
このグループのユーザーの要望や行動を分析することにより優良顧客を自社サイトから離さないサイト作りができるといえるでしょう。
優良顧客への対策としては、優遇サービスなどを提供し優良顧客として居続けてもらえるようにさらなる満足度の向上を試みてみましょう。以下はその一例です。

  • ポイントの高還元
  • 優良顧客割引き
  • 商品の先行販売
  • キャンペーンの先行お知らせ
  • バースデープレゼント
  • 社内や工場などへの特別ご招待
  • 特別なモニター制度

また、ランクAとBにおいては直近の1年間の購入回数が増えていますので売上が増えた理由を探ってみるのもよいでしょう。

安定顧客のパターン

長い期間、一定の関心を保ち続けているユーザーのグループです。
優良顧客にも休眠顧客にもなりやすいグループなためどのようなフォローをするかで大きな差が生まれてきます。つまり、最も注意が必要なグループといえます。
優良顧客に行なっているような施策を安定顧客グループにも一部適用してみるなどしてみてもよいでしょう。

休眠顧客のパターン

関心が下がり続けている、もしくは、すでに休眠状態をいえるユーザーのグループです。
完全な休眠状態のユーザーの掘り起こしは非常に困難といえます。そのため、そのような状況に陥る前になんとかするのが対策といえるでしょう。

また、その観点からみるとこの「休眠顧客のパターン」のユーザーは”完全な休眠状態”とまではいっていないため対策をとることで安定顧客になる可能性はあるといえます。
対策としては、DMやステップメールなどによるアプローチがありますが、それを効果的に行なうためには細かい休眠顧客の分析が必要となります。

例えば、休眠傾向にあるユーザーにもそれぞれ理由と原因があり、サービスに対し不満が溜まっていき徐々に離れだしているケースやサービス内容のリニューアルなどにより不満が突如生まれたケースなどもあります。
より魅力的な競合が登場したケースやそもそもサイトのことを忘却しているケースなどもあり理由は多岐に渡るため、原因の特定と原因ごとの対策を考える必要があるということです。

まとめ

今回紹介した分析方法は購入頻度の傾向からパターンを算出し分析します。パターンによる分析は全体を広く大まかに分析するため、マーケターの考察や解析の余地があり柔軟性があります。

メジャーな分析手法であるRFM分析などはよりストレートに”回答”が出てきますが、逆にいうと考察の余地が少ないともいえます。初期の検討段階ではより全体を大まかに俯瞰して行なえる分析のほうが適していることもあるため状況に合わせて分析手法を選択してください。

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